はじめての簿記講座-第33回-減価償却について

Updated on 12/13/99

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アパートなど、長く使う建物は、数年後にいきなり価値がなくなってしまうのではなく、だんだん古くなっていくものだから、数年後の損失を毎年見込んでやる必要がある

減価償却(げんかしょうきゃく)は、建物や機械といった資産を長く使うとき、最後に捨てたり撤去したりするときの損失をその使う期間に応じて配分する計算方法

前回は、さまざまな損失についてご紹介しました。今回はこれをふまえて、減価償却について説明してみましょう。

皆さんがアパート経営をすることを考えてみましょう。普通預金から一千万円を投じて、アパートを建てました。20年くらいは貸しつづけることが出来るでしょう。アパートを建てたときの仕訳はどうなりますか。

(借方) 建物 10,000,000 (貸方) 普通預金 10,000,000

運良く、長年入居してくれる人が何人かいて、1年あたりの家賃収入が例えば百万円だとすると、その1年ごとの仕訳はどうなりますか。

(借方) 現金 1,000,000 (貸方) 受取家賃 1,000,000

続いて、20年後にはアパートも古くなったので取り壊したとしましょう。前回で説明したとおり、建物を壊すと損失になります。

(借方) 建物撤去損失 10,000,000 (貸方) 建物 10,000,000

さて、上の仕訳のままだと何だか変です。20年間家賃を受け取るだけ受け取ってしまうことになり、毎年百万円ずつ儲けが出ていますが、20年後にまとまって一千万円の損失が出ることになります。

1年後 百万円の儲け
2年後 百万円の儲け
・・・
20年後 百万円の儲け
一千万円の損

アパートを建てたときに費用とせず「建物」とするからいけないのであって、反対に、アパートを建てたときに、「建築費」という費用(たとえば水道光熱費や通信費と同じようなもの)だと考えたらどうなるでしょうか。

(借方) 建築費 10,000,000 (貸方) 普通預金 10,000,000

これでも何だか変です。最初の年は一千万円の費用が掛かりますが、そのあと20年間百万円ずつ儲けが出ることになります。

1年後 百万円の儲け
一千万円の損(費用)
2年後 百万円の儲け
・・・
20年後 百万円の儲け

 

このような仕組みは、個人であればあまり気にすることもありませんが、会社がこのような決算をしていると深刻な問題です。20年後に大きな損失が出るような会社は、最後の18,19年後は誰も投資してくれないでしょう。逆に最初の年に大きな損失が出るような会社は、最初は誰も投資してくれません。それに、毎年百万円が丸々儲けというのも変です。一千万円のアパートは、20年後にいきなり価値がなくなってしまうのではなく、だんだん古くなっていくものだから、20年後の損失を毎年見込んでやる必要があるでしょう。

そこで、「減価償却」(げんかしょうきゃく)という概念を使います。減価償却は、建物や機械といった資産を長く使うとき、最後に捨てたり撤去したりするときの損失をその使う期間に応じて配分する計算方法です。または、最初に買ったときの建築費、機械費をその使う期間に応じて配分する計算方法といってもよいでしょう。

今回は、一千万円のアパートを20年使うので、1年あたりでは、10,000,000円÷20年=500,000円となります。そこで、1年当たりの減価償却費を500,000円として、建物から徐々に差し引いていきます。

(借方) 建物減価償却 500,000 (貸方) 建物 500,000

どうして建物から差し引いていくかお分かりですか?20年後に撤去するときの仕訳である、

(借方) 建物撤去損失 10,000,000 (貸方) 建物 10,000,000

の損失を単に20年にわたって分割しているだけだからです。

さて次回は、これをふまえて費用と収益について考えてみましょう。


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