はじめての簿記講座-第21回−商品の流れ（その６-移動平均法）

Updated on 11/22/99

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売るときの原価はその時在ったものの平均として考える商品の流れを「移動平均法」（いどうへいきんほう）という

移動平均法では、出入りするたびにその時にあるものすべてを同じ単価として計算し直す

はじめに、11/18/99付のご紹介では、移動平均単価の計算式が誤っておりました（÷とすべきところ-と表記していました）。下記にこの色で修正しております。誠に申し訳ありません。

前回は、後に仕入れた商品から先に売れていく仕組み、後入先出法についてご紹介しました。今回は、また違った流れについて説明しましょう。

前回の八百屋さんの例を再び考えます。ニンジンはあまり見分けのつくものではないので、仕入れたり売ったりしているうちに、どれがいつ仕入れたもので、どれを売ったかがそのうち分からなくなってくるかもしれません。だとすれば、売ったときの原価はどれでも一緒と考えてしまった方が良いかもしれないわけです。このような、売るときの原価はその時在ったものの平均として考える商品の流れを「移動平均法」（いどうへいきんほう）と言います。

前回と同じ八百屋さんの例にもう一つ例を足して考えてみましょう。
昨日からのニンジンの繰越しは、35本（単価20円、仕入れ値700円）でした。
今日は朝一番に、ニンジンを15本仕入れ、単価は30円、仕入れ値は450円でした。
今日の午前中はニンジンが全部で30本売れ、したがって昼の残りは20本です。つぎに、午後にもう一度ニンジン10本を仕入れて、それが単価26円だったとしましょう。さらに、午後はニンジンが全部で15本売れました。さて、移動平均法で計算すると、今日の売上原価は幾らで、今日店を閉めたときの残りのニンジンは幾ら分だったと考えればよいでしょうか。

これを勘定の形で書くと次のようになります。仕入と売上の順番を考慮して書いてあるため、途中に空欄があります。

入り				出
摘要	本	金額	単価		本	金額	単価
繰越	35	700	20
朝一番の仕入	15	450	30	午前の売上	30	？	？
午後の仕入	10	260	26	午後の売上	15	？	？
				在庫	15	？	？
計	60	1,410

さて、移動平均法では、出入りするたびにその時にあるものすべてを同じ単価として計算し直します。したがって、

朝一番で仕入れた後の単価は全部で、昨日の残りと合わせて、（700円+450円）÷(35本＋15本)＝23円 となります。したがって、午前中の売上は原価の単価が23円で30本売ったことになりますので、売上原価は23Ｘ30＝690円、午前中の残りは、23×20＝460円となります。

次に、午後にもう一度仕入れてくると、その時の単価は全部で、（460円+260円）÷(20本＋10本)＝24円となります。したがって、午後の売上は原価の単価が24円で15本売ったことになりますので、売上原価は24Ｘ15＝360円、午前中の残りは、24Ｘ15＝360円となります。

さて、表をもう一度、移動平均法に従って書き直して見ましょう。

入り				出
摘要	本	金額	単価		本	金額	単価
繰越	35	700	20
朝一番の仕入	15	450	30	午前の売上	30	690	23
午後の仕入	10	260	26	午後の売上	15	360	24
				在庫	15	360	24
計	60	1,410			60	1,410

　

上の表からも、売上原価は690+360＝1,050円、在庫の金額は360円となることが分かります。この金額は､ほかの方法で計算したときの金額とは異なりますが､その合計はやはり1,410円で、繰越＋仕入＝売上原価＋在庫となっていることに注意してください。
ところで、移動平均法は総平均法と似てみえますが､計算方法はまったく違います。上の例を総平均法で計算すると、繰越＋仕入＝1,410円で60本、したがって単価は1,410÷60＝23.5円となります。すると、売上原価は45本×23.5＝1,057円（1057.5円の小数点以下を四捨五入）、在庫は15本×23.5=353円（352.5円のところ、合計を1,410円とするため、調整）となり、移動平均法の結果とは異なることが分かります｡

商品の流れのご紹介はこれで終わりです｡次回は、ここまで紹介した商品の流れをまとめてみましょう。　

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