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売るときには、いつ幾らで仕入れたものを売っているのかは把握できない
総平均法は、繰越分と仕入分とが全部均等に売れ、均等に売れ残った、と見なす
総平均法は、売上原価も期末の原価も、繰越分と仕入分の総合計から総平均の単価を求めたもので計算する
前回は、商売が終わったときに、幾らで仕入れたものがどれだけ売れ残ったかがはっきり分かるような計算方法、個別法についてご紹介しました。今回は、もう少し複雑な商品の流れについて説明しましょう。
前回のように、あまり商品の種類が多くなければ、一つ一つの商品の出入りを記録しておけるので、最後に残った商品は元々幾らで仕入れていたか、その元の値段(原価)がすぐに分かります。ところが、実際の会社では一つ一つの商品の出入りまでは把握できません。みなさんがよく出かけるスーパーマーケット一つとっても、一万点以上の商品が一つの店においてあり、また仕入れた値段も時によってまちまちです。いつ、幾つのものを幾らで仕入れたかは分かったとしても、売るときに、いつ仕入れたものを売っているか、幾らで仕入れたものを売っているのかは通常は把握できず、単に何個売って最後に何個残ったということしか分からないのです。
そこで、このような場合に原価や残った商品の在庫が幾らかを見るために、幾つかの方法が用意されています。今回はその中から、「総平均法」(そうへいきんほう)をご紹介します。
八百屋さんの例を考えてみましょう。
たとえば今日だけのニンジンの分だけの決算を考えます。昨日ニンジンを35本仕入れてあって、仕入れ値は700円だったとします。昨日は仕入れてからニンジンは売れていません。つまり昨日の仕入れはそのまま今日へ繰越となりました。
今日は、ニンジンを15本仕入れましたが、生鮮食料品ですから仕入れ値は毎日変わります。今日の仕入れ値は15本で450円です。今日はニンジンが全部で30本売れました。今日の売上原価は幾らで、今日店を閉めたときの残りのニンジンは幾ら分だったと考えればよいでしょうか。
昨日の繰越 35本 700円 単価20円
今日の仕入 15本 450円 単価30円
今日の売上 30本
これを勘定の形で書くと次のようになります。
入り |
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出 |
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摘要 |
本 |
金額 |
単価 |
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本 |
金額 |
単価 |
繰越 |
35 |
700 |
20 |
売上 |
30 |
? |
? |
仕入 |
15 |
450 |
30 |
在庫 |
20 |
? |
? |
計 |
50 |
1,150 |
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今日の在庫は何本ありますか?35−15−30=20本というわけです。
さて、売上・在庫それぞれに相当する原価は幾らでしょうか。昨日仕入れたニンジンと今日仕入れたニンジンに印でもつけておけば分かりやすいでしょうが、そこまですると手間もかかります。そこで、総平均法を使うわけです。
総平均法は、今回の当初在庫分と今回の仕入分とが全部一緒になって、均等に売れ、均等に売れ残った、と見なす考え方です。つまり、昨日仕入れたものも今日仕入れたものも区別なく、どれも同じ物とみるわけです。八百屋さんが今朝店頭にならべるとき、昨日のニンジンも今日のニンジンも同じカゴに入れて並べたと考えれば分かりやすいでしょうか。したがって、今回のニンジンの単価は、すべての仕入れ金額を合計したものを、すべての数量で割った平均の単価を求めたものと考えればよいでしょう。
この例では、昨日からあったニンジンが700円、今日仕入れたニンジンが450円なので、合わせて1,150円になります。本数の方は昨日からの分35本と今日の仕入れ15本を合わせて50本になります。ここまでは上の表にも書きました。そこで、今回の単価は
1,150÷50=23円ということになります。
売れた分が30本、在庫は20本なので、単価23円のものが均等に売れ、均等に売れ残ったと考えて、それぞれ原価は、
売上原価 =単価23円×30本=690円
在庫の原価=単価23円×20本=460円
となります。ちなみに、売上原価+在庫の原価=1,150円となり、これは昨日からの繰越+今日の仕入れに一致しなければならないわけです。もう一度表にまとめてみましょう。
入り |
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|
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出 |
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摘要 |
本 |
金額 |
単価 |
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本 |
金額 |
単価 |
繰越 |
35 |
700 |
20 |
売上 |
30 |
690 |
23 |
仕入 |
15 |
450 |
30 |
在庫 |
20 |
460 |
23 |
計 |
50 |
1,150 |
23 |
計 |
50 |
1,150 |
23 |
まとめると、総平均法は、売上原価も期末の原価も、繰越分と仕入分の総合計から総平均の単価を求めたもので計算する、ということになります。
次回は、別の計算方法について説明しましょう。